2023年9月1日
会社経営
ファクタリングを利用した際の会計処理を分かりやすく解説。
自社に会計経理の専門部署がある場合は任せることができますが、中小の事業者の方は社長が経理担当を兼ねている所もあります。 その場合、ファクタリングを利用した際の会計処理について知っておく必要があります。 経理処理においては日常的に「仕分け」作業が必要で、これには一定の知識が求められます。 本章ではファクタリング利用時の会計処理について解説していきますので、ぜひ参考になさってください。
■会計処理における仕分けとは

「仕分け」とは、発生した取引を勘定科目に分類するための作業で、簿記の基本となるものです。 仕分けにおいては左側を「借方」、右側を「貸方」とし、取引において動きのあった金額を勘定科目に落とし込んでいきます。 仮に売掛金が100万円分発生したとすれば、以下のように仕分けを行います。
ファクタリングにおける仕分けで多少面倒なのは、取引形態に二社間取引と三社間取引があり、それぞれで仕分けの手順が異なることです。
■ファクタリングの種類によって変わる仕分け

ファクタリング契約で二社間取引の形態をとる場合、売掛先企業は取引当事者となりません。 売掛金は期日になると債権を譲渡する企業に支払われるので、ここで一旦の資金移動が起きます。 その後債権譲渡企業を介してファクタリング業者に資金移動が起きるので、その動きを仕分けに反映させることになります。 三社間取引の場合、売掛先企業の合意を取って進めることになり、売掛金は債権譲渡企業を経由せず、ファクタリング業者に直接支払われます。 二社間取引とは資金の動きが異なるため、仕分けの仕方が変わってくることになります。 これを理解したうえで、二社間取引と三社間取引における仕分けの方法を見ていきましょう。
■三社間ファクタリングの仕分け例
まず三社間ファクタリングで進める場合の仕分けを見ていきます。 先の例を用い、売掛金が100万円分発生したところから始めます。
次にファクタリング業者と契約したタイミングで次の仕分けを行います。
借方
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貸方
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未収入金 100万円
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売掛金 100万円
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売掛債権は売却して無くなりますが、その代金が入金されるまでは未収入金の扱いになります。 そしてファクタリング業者から売掛債権の売買代金が振り込まれたタイミングで次の仕分けを行います。 ファクタリング利用に際しては手数料の支払いが必要で、その費用は売却損の勘定科目を用います。 ここでは手数料が3万円かかったとします。
借方
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貸方
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普通預金 97万円
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未収入金 100万円
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売掛債権売却損 3万円
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三社間取引の場合は以上で仕分けが終了します。
■二社間ファクタリングの仕分け例
次に二社間ファクタリングにおける仕分けを見ていきます。 重なる部分もありますが比較しやすいようにあえて載せていきます。 まず売掛金が100万円分発生します.
ファクタリング業者と契約したタイミングで同じように仕分けを行います。
借方
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貸方
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未収入金 100万円
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売掛金 100万円
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ファクタリング業者から売買代金が振り込まれた時の仕分けですが、二社間取引は手数料が増えるのでここでは10万円の手数料がかかったとしましょう。
借方
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貸方
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普通預金 90万円
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未収入金 100万円
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売上債権売却損 10万円
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三社間取引ではここで仕分けが終わりますが、二社間取引ではまだ続きます。 二社間取引では売掛先から債権譲渡企業に対し、期日になると通常通り支払いがなされます。 そのタイミングで次の仕分けを行います。
借方
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貸方
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普通預金 100万円
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預り金 100万円
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売掛債権は売却済みで権利はすでに手放しているため、勘定科目は預り金となります。 預かり状態となっている資金をファクタリング業者に移転する必要があるので、精算を行った際に次の仕分けを行います。
借方
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貸方
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預り金 100万円
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普通預金 100万円
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これで二社間取引におけるファクタリングの仕分けは終了します。
■ファクタリングにおける仕分けの注意点

ここではファクタリング利用における仕分けで留意すべきポイントと注意点を確認します。
①消費税はかからない
ファクタリング取引の税務上の扱いは債権の譲渡取引にあたり、消費税の課税対象となっていません。 ですからファクタリング取引自体には消費税はかかりません。 もし取引交渉の際に消費税がかかるような話をされたら悪質な業者の可能性があるので注意が必要です。 ただし、二社間取引を進めるにあたっては債権譲渡登記を求められることがあり、その場合は登記費用に消費税がかかることがあります。 債権譲渡登記は債権の二重譲渡などを防ぐためのもので、売掛先の合意を取らずに進める二社間取引で求められることがあります。 債権譲渡登記は必ず必要になるわけではありませんが、ファクタリング業者がリスク管理のために必要だと判断すれば必須となるので、消費税がかかることとなった場合は仕分けにも反映させる必要があります。
②決算期を挟む場合
売り上げにかかる課税の面では、決算期付近のファクタリング取引となる場合に留意を要します。 課税当局の目線ではファクタリング云々ではなく実際に売り上げが上がったタイミングで課税がなされることになります。 ファクタリング利用に際し実際に資金が振り込まれるタイミングに関わらず、発生した売り上げに対して課税されることに留意します。 現金化された資金が振り込まれるのが次期になる場合でも、当期中の法人税計算として処理する必要があります。
■まとめ

本章ではファクタリング利用時の会計処理について見てきました。 会計処理においては仕分け作業が必要になり、ファクタリング利用に際しても手順に従って仕分けが必要になります。 二社間取引と三社間取引ではスキームの違いから仕分けの仕方にも違いが出てきます。 会計が苦手な人は取っつきにくさを感じると思いますが、慣れてしまえばそれほど難度の高いものではありません。 二社間取引でも三社間取引でも、上で見たように順を負って進めれば大丈夫ですから、焦らずに試してみてください。