2022年12月16日
会社経営
決算前の法人節税対策7つを分かりやすく解説します。
決算期は経営者にとって心身ともに落ち着かない時期となります。 企業は決算によって法人としての成績が決まることになり、これが対外的に広く公開されることになるので、信用面に強い影響を及ぼし、今後の取引にも影響してくる可能性があります。 また経営者としては内側の事情としてできるだけ節税を意識したいところで、決算前には特に意識が向くと思います。 本章では決算前の法人が実行できる節税方法について見ていきますので、ぜひ参考になさってください。
■後払い・前払い金の損金算入

家賃や水道光熱費、あるいはネット回線の通信費などについては、利用した月の翌月に支払うことになっていることが多いです。 こうした後払いとなる費用については、利用する月分の費用を未払い費用として損金に算入できます。 例えば三月決算の企業であれば、三月分の利用料は翌月の四月に支払うことになります。 三月分の利用料を三月の未払い費用として今期分に計上することで、経費を増すことによって計算上の儲けを減らす効果が狙えます。 また後で支払うべき費用を前払いで支払うことで、今期分の損金を増やして同様の効果を狙うこともできます。 例えば同様に三月決算の企業を想定するとして、時期4月以降の分をまとめて今期内に支払えば前払費用として損益算入が可能です。 例えば来期分のオフィス家賃など、前払費用はある程度まとまった支払いが可能ですから、今期の儲けが大きくできるだけ圧縮したい場合は前払費用の額を増やすことで柔軟な対応ができます。
■決算賞与を支給する

従業員に支払う賞与は損金に算入できるので、経費計上することで節税対策になります。 従業員にとっても賞与をもらえることはモチベーションのアップにつながるので、予想に反して今期の儲けが大きく、税金の負担が増えそうな時には検討したい手法です。 従業員に支払う賞与については、条件を満たせば決算までに実際に支払っていなくても経費計上できる特徴があります。 以下の要件を全て満たしていれば損金算入できるので検討しましょう。 ・決算期末までに、全従業員に、同時期に支給額をあらかじめ通知していること ・今期事業年度終了の日の翌日から1カ月以内に賞与を支給すること ・上記従業員に対して通知をした日の属する事業年度において損金経理をしていること
■不良在庫を損金に算入する

不良在庫を抱えていると売り上げに貢献しないだけでなく保管費用もかかってしまいます。 不良在庫は売却損や廃棄損などによって損金に算入することができます。 例えばバーゲンセールを開催して原価よりも安く売ると、その差額を売却損として損金に算入できます。 また売れそうにない在庫は廃棄処分すれば、その値段分の金額を排棄損として損金算入できます。
■固定資産の評価を減らす

保有している固定資産の中で利用していないものがあれば、安く売却することで売却損として損金に算入できます。 また売却せずとも、資産価値の評価の見直しを行うことで評価を減額し、その分を評価損として計上することができます。 ただし固定資産の評価損が使えるのは災害時など条件が整った時に限られます。
■決算日の変更

決算直前で多額の利益が出て税金の心配が発生した時は、思い切って決算日の変更を行うこともできます。 三月決算の会社で決算月に相当大きな利益が出たような場合、決算月を二月に変更すると、その儲けは来期分の儲けに変わります。 つまり今期分として考えなくても良くなるということです。 これで今期の儲けを減らし節税すると同時に、来期に回った儲けについては1年かけて少しずつ節税をしていく余裕が生まれます。 決算日の変更は株主総会の決議が必要なため、関係者の根回しを行って速やかな決議が必要になります。
■設備投入の前倒し

事業に必要な設備があって導入を検討している場合、来期に行う予定であったものを今期内に実行することも有効です。 いずれ必要になるものですから、設備投資の前倒しを行うことで今期分の儲けを圧縮し節税対策にすると有効です。
■不良債権を損失に計上
掛け取引で発生した売掛債権などは回収ができないうちにまとまった額になっていることがあるので、決算時期には総洗いして点検しましょう。 回収できるものは回収し、回収できる見込みがない不良債権については貸し倒れ損失として損金計上が可能です。 ただし貸し倒れ損失については客観性のある証拠が必要で、自社の適当な判断で不良債権に認定することはできません。 例えば売掛先が破産の決定を受けていたり、民事再生、会社更生を行って債権が消滅しているなどであれば不良債権として認められます。 また適切な方法で売掛先の経営状況を調査して、債権の回収が不可能であることを示せる証拠を揃えることでも可能です。 あるいは取引停止の状態が長く続いていて資金回収が見込めないようなケースでも利用できます。 貸し倒れ損失の計上については税務署によるチェックが厳しく行われる項目であるため、認めてもらうには証拠を残すことが重要になります。 例えば内容証明郵便などで資金回収を行っているのに相手からの反応がなければ、証拠として機能するでしょう。
■できるだけ余裕を持って税理士に相談しましょう

決算期直前に行える節税対策について色々と見てきましたが、直前に行えるとしても一定の損が発生することが多いことには留意が必要です。 例えば不良在庫を原価よりも安く売りさばいて売却損にする方法などは確かに節税的には機能しますが、それは会社としては結局損をしていることに変わりはありません。 どうしても仕方がない場合もあるとは思いますが、できれば直前に慌てないようにできるだけ余裕をもって前々から少しずつ節税対策を施しておくと会社の損を軽減することができます。 顧問税理士を採用している会社もあると思いますが、顧問税理士がいなくてもスポット依頼として節税相談が可能な税理士も多くいます。 やることは対象の会社の経営状況を調べ、節税できる余地がないかどうかをチェックするだけですので、慣れている税理士であればそれほど難度が高いわけではありません。 スポット依頼の場合はレポートとして節税効果が見込める点や、実行の仕方などの提案書を出してくれると思いますので、社内で検討してみましょう。
■キャッシュ不足にならないように配慮も必要
なお、節税の話題ではともすると節税だけにフォーカスし過ぎて全体が見えなくなることがあるので注意が必要です。 節税行動は損を伴うことも多いとお話ししましたが、例えば設備投入などでは現金の支出が発生しますから、キャッシュの減少につながります。 決算期はキャッシュが不足しやすい時期でもあるので、資金ショートが起きないように配慮も必要です。
■まとめ

本章では決算前の法人が実行できる節税方法について見てきました。 比較的簡単に実行できるものや、株主総会が必要など手間のかかるものなど色々ありますが、もし決算直前で多額の儲けが発生した場合は検討してみましょう。 できれば直前に慌てなくても良いように、事前に余裕を持った対策を取れるのが理想です。 少しでも税金の負担を減らせるように、専門家の意見を参考にしながら対応するようにしてください。