2023年2月27日
会社経営
経営者保証ガイドラインが4月から変わる!その内容を分り易く解説します。
経営者は会社の運営にかかる様々な責任を負う立場であり、従業員のように労働法制に守られることもありません。
法人運営の場合は個人事業と違い、一応会社と経営者個人の切り分けがされていますが、資金調達の際には経営者保証を求められることが一般的です。
そのため実質的に個人との切り離しが難しくなり、やはり大きな責任を負うことになってしまうので、経営者としては辛いところです。
経営者を守るルールとして経営者保証ガイドラインがあり、このルールが一部改訂されることとなりましたので、本章ではこの点について取り上げて解説していきます。
■経営者保証とは?

経営者保証とは、会社が法人として融資を受ける際に、その会社の代表者が個人の資格として信用保証を与えるものです。
つまりその融資事案において社長が会社法人の保証人となり、万が一返済が焦げ付いた場合は社長が個人の責任として保証債務を負うものです。
融資を行う金融機関から見ると、直接の貸付けの相手方は会社法人となりますが、返済がこげ付いた時に備えて担保や保証人を取りたいと考えます。
担保に提供できる媒体がない場合、人的保証として社長個人の保証を必要とすることが多く、これを経営者保証と言いまます。
現実の融資事案において、約7割程度の事案で経営者保証を必要とするとされており、社長個人の責任が重くなっていることが分かります。
■経営者保証がもたらす問題とは?

経営者保証は貸し付けを行う金融機関のリスクを考えたものですので、その必要性も理解はでき、絶対悪として存在するものではありません。
また経営者保証があることで融資を受けやすくなることも事実ですので、経営者にとっても必ずしも忌むべき存在というわけではないのですが、実際問題として経営者保証の悪影響は様々議論されているところです。
まず直接的には社長個人の責任があまりに重く、万が一会社経営が行き詰った時には社長個人の生活の存立が脅かされることになります。
企業は個人とは違うレベルで多額の資金を運用していますから、この返済が焦げ付けば相当の債務負担を保証人たる社長が負うことになります。
自己破産をしなければならない事態も十分考えられるので、その後の再起が難しくなります。
そしてそうした重い責任を負わなければ事業ができないということになると、若い人も起業に及び腰になります。
若い力こそ国の活力を支える大切な原動力になるところ、そうした芽が育たないことになれば社会全体、国全体の力が衰えてしまいます。
経済的低迷につながるだけでなく、国力低下が進み諸外国とのパワーバランスで劣勢に立たされることになるかもしれません。
また現在すでに全国で問題になっている事業承継にも暗い影を落とします。
経営者の高齢化が進み、後継となる担い手不足が叫ばれていますが、これも経営者の負担があまりに大きく、後を継ぐことに大きな不安を抱える相続人が多いからと指摘されています。
事業承継問題では国も様々な施策を講じていますが、総じて問題の解決には程遠い状況です。
法律面、税制面で優遇措置を設けるなどの工夫もしているものの、相続人の不安を払しょくするには至らず、国内各所で経営者の跡継ぎ問題は火種を残したままです。
経営者保証の問題はダイレクトに後継者の不安につながるものですから、焦点を当てて対策を取ることが求められていました。
■経営者保証に関するガイドラインの見直しが決定

経営者保証ガイドライン自体は2014年からすでに運用されており、そもそも経営者の負担を軽減する措置として機能しています。
現行の運用では、以下の要件の一部または全部を満たす場合には、金融機関は経営者に個人保証を求めないことや、保証機能の代替手法の活用を検討することとされています。
①法人と経営者個人とで資産の所有やお金のやりとりに関し明確に区分・分離されている
②財務基盤が強化されていて、法人のみの資産や収益力で返済が可能である
③金融機関に対し、適時適切に財務情報が開示されている
上記が確認できれば、経営者は個人保証なしで融資を受けられる可能性が有るということです。
ちなみに保証機能の代替手法の活用については停止条件付保証契約が例として挙げられています。
これは一応経営者の個人保証を取り付けるものの、その効力の発行を停止状態とし、特定の事象が発生した時のみに保証債務が発生するものです。
例えば直接の債務者たる法人が約束した財務情報の提出義務を怠った場合など、何らかの義務違反が発生するまでは経営者の個人保証債務は効力を有せず、義務違反が発生したらその効力を有効化するような形です。
ただ、本ガイドラインは法的な拘束力はないので、上記①~③が確認できたとしても最終的な判断は金融機関に委ねられているので、経営者の個人保証を求めることは可能です。
今回の改定はこの点を補完するもので、仮に金融機関が経営者の個人保証を求めることとする場合、以下の2点を具体的に説明しなければならなくなります。
①上記①~③のどこが不十分であるために経営者の個人保証契約が必要となるのか
②どこをどう改善すれば経営者の保証契約の変更や解除の可能性が高まるのか
上記の具体的な内容を説明したうえで、これを記録に残しておくことが求められます。
以上の改正が組み込まれたガイドラインは、今年2023年の4月からの運用が予定されています。
ここで勘違いしてはいけないのは、経営者の個人保証が撤廃・禁止されたわけではなく、個人保証の要不要はあくまで金融機関の最終判断に委ねられることに変わりはないということです。
お金を支出する側のリスクを考えれば、「保証も無しにお金は貸せないよ」というのはもっともなことです。
ただ闇雲に経営者に個人保証の負担を背負わせるのは適当ではないので、本当に必要かどうかをこれまでよりも一層踏み込んで検討しましょう、ということです。
この点は勘違いのないようにしてください。
■まとめ

本章では経営者保証ガイドラインのルールが一部改訂されるという話題をお伝えしてきました。
経営者の個人保証は色々と問題もあり、個人の負担が不相応に拡大してしまうこともあります。
その負担ができるだけ発生しないよう、これまでよりも個人保証の必要性がよりシビアに判断されることになるので、経営者サイドとしては一定の朗報と言えるでしょう。
ただし経営者保証が禁止されたわけではないことと、ルール改正によってこれまでよりも融資を引き出しやすくなるものでもないので、この点は留意を要します。