2022年9月23日
会社経営
これから起業する前に知っておきたい4つの基礎知識と注意点
初めて起業を考える人は未経験の世界に踏み出すことについて不安を覚えることと思います。
やりたいことが決まっていればある程度の具体的なビジョンを持てているかもしれませんが、経験がない以上は不透明な部分が多いので不安を完全に払しょくするのは難しいでしょう。
起業すると全てが経営者の責任となるので、必要な知識は事前に仕入れておきたいものです。
この回では起業する前に知っておきたい基礎知識や注意点をお伝えしていきますので、ぜひ参考になさってください。

■起業形態に関する基礎知識
起業する際には構想中のビジネスの規模や顧客の獲得方法、取引相手となる事業者の種類や規模などを考慮して、どのような形態の会社を立ち上げるのか決めなければなりません。
起業形態には主に以下のような種類があります。
①個人事業
個人事業は法人格を持たないため、事業によって生じた儲けは直接経営者の利益になる反面、事業によって生じた借金などの負債も直接経営者が負うことになります。
その意味でリスクがあるものの、機動性の面では秀でているためスモールビジネス主体の場合は個人事業から始めるケースが多いです。
軌道に乗ったら法人化して事業拡大を狙うこともできます。
②法人を設立する
個人事業は信用面で劣るため、取引相手が法人となる予想である、あるいは顧客獲得のためには厚い信用が求められる場合、法人を設立する必要があるでしょう。
代表的な法人は株式会社で、近年は株式会社設立のハードルが下がったため比較的容易に立ち上げることができます。
他には合同会社、合名会社、合資会社などもあり、こちらは「持分会社」という種類の法人になります。
株式会社よりも信用面で劣りますが、より設立がしやすいこともあり、家族経営など限られた人材で会社を運営したいケースで利用されています。
事業内容によってはNPO法人なども検討できるので、
迷ったら会社設立に詳しい行政書士などに相談してみると良いでしょう。
③フランチャイズ形式
構想している事業内容によってはフランチャイズ形式で起業を考えることもできます。
コンビニや飲食業など特定の業種では積極的にフランチャイジーを募集しています。
※フランチャイジー
フランチャイズ形式で出店、営業する加盟店をいいます。これに対して加盟店を統括する本部企業をフランチャイザーといいます。
フランチャイズ形式では店舗経営のノウハウをダイレクトに吸収でき、商品などの仕入れも本部の販路を使って自動的に組み立てられるので、フランチャイジー経営者は苦労せずに経営に専念できます。
フランチャイズは顧客獲得に苦労せず起業当初からすぐに収入を確保できることと、すでに浸透したネームバリューを利用できるのが大きな利点です。
■資金集めに関する基礎知識
起業を考えるならば資金集めに関しても知識が必要です。
事業資金は大きく返済の必要のない「出資」と、返済が必要な「借り入れ(融資)」の二つがあります。
起業・開業時における二種類の資金について、調達法の種類にどのようなものがあるかそれぞれ見ていきましょう。

<出資を受ける方法>
①自己資金
法人を設立する場合、経営者個人のお金を法人に出資する形になります。
個人事業の場合は個人との切り分けがありませんが、分かりやすいように事業用口座を開設することが多いと思いますので、預金口座から引き出した資金を事業口座に移転して使用します。
②株の発行
株式会社は株を発行して株主を募ることができ、株主が提供する資金を出資として資本にすることができます。
返済の必要がないので安定した事業資金となりますが、株主は経営に口を出すこともできるので、
発行株式の50%超を特定の株主に握られないようにするなどの配慮が必要です。
③ベンチャーキャピタル(VC)
将来有望な企業のスタートアップ時に資金を提供し、その会社を育てて上場させた頃に株式を売り払い利益を得ることを目的にするのがベンチャーキャピタルです。
先進的な事業内容の他、大きな注目を浴びそうな構想があればベンチャーキャピタルの支援を受けることができるかもしれません。
④エンジェル投資家
上記③の個人版ともいえるのがエンジェル投資家です。
個人で資金を拠出するので、個人的な興味があるビジネスであれば出資を受けることができます。
一般的には普通の企業でエンジェル投資家の支援を受けることはハードルが高いとされますが、どこで興味を持ってもらえるかは投資家次第ですので、思わぬところで支援の希望が上がるかもしれません。
最近は資金力のあるユーチューバーやインフルエンサーなどが多方面とコラボする企画が普通に行われているので、個別に話を持ち掛けて相談することもできます。
⑤クラウドファンディング
最近の資金調達法で注目されているのがクラウドファンディングです。
会社としての目標を掲げ、これに賛同してもらえる人々から広く小口の資金提供を募ることができます。
クラウドファンディングの中には返金が必要な種類のものもありますが、多くは返金を要せず、その代わりに自社ブランドのサービスや商品を提供し、満足を得てもらいます。

<借り入れ及び融資>
次に返済が必要な借り入れや融資を受ける方法ですが、こちらも方法はいくつかあります。
①プロパー融資
俗にいう銀行融資で、会社としての信用や担保、保証人の信用力などを基に資金の貸付けを受けるものです。
②制度融資
制度融資は公的な保証を提供する信用保証協会の保証付きで銀行から融資を受けるものです。
信用力がなく通常は断られるケースでも融資獲得のチャンスが生まれます。
③日本政策金融公庫
起業時など信用が薄く事業実績もない状態では金融機関がどうしても融資に及び腰になります。
スタートアップ事業者を支えるために国が100%出資して作られた金融機関が日本政策金融公庫で、要件を満たす事業者が資金の貸付けを受けることができます。
④信用金庫からの借り入れ
信用金庫は地域に根差した金融機関としての性質があり、銀行よりも親身な対応が望めます。
小規模事業者などに優しい金融機関ですので、銀行で断られたらこちらに相談してみましょう。
⑤親族や友人からの借り入れ
金融機関からの融資が望めない場合、親族や親しい友人を頼りにすることもできます。
ただし人間関係を壊さないように返済に支障がない範囲にしておきましょう。
■会計に関する基礎知識
会計に関しては法人であれば法人会計について、個人事業であっても帳簿の付け方などは勉強しなければなりません。
これについては地元の商工会議所や青色申告会、税務署などが無料の講座をしょっちゅう開いていると思いますので、ぜひ参加してください。
面倒であれば会計ソフトを導入したり、会計に明るい人材を雇うこともできます。
ただし経営者としては最低でも「経費」に関して把握できるようにし、領収書などを確保して証拠を残すことを忘れないようにしましょう。

■税金に関する基礎知識
事業によって生み出される収入は個人事業であれば所得税、法人であれば法人税の対象になります。
赤字が出た場合は個人事業であれば最大で3年、法人であれば最大で10年間の繰り越し控除が可能です。
黒字を赤字と相殺して数字上の利益を減らし、その分の税金を減らすことができますが、
自動で適用されることはないので確定申告の際に自分で控除計算をする必要があります。
税金に関しても様々な団体が勉強会や講座、セミナーを開いていますので、起業前に何度か足を運んで受講することをお勧めします。
■起業の際の注意点
どんなに慎重に準備したとしても、顧客がつき収入が安定して上がってくるまでには時間がかかります。
その間のことを考え、専業でやる場合は少なくとも半年から1年程度の生活費を確保しておくと安心です。
勤め人の方でまた退職していないのであれば、可能なら最初は副業として始めてみるのがお勧めです。
実際上手くいきそうか見極めが利くので、上手くいきそうだったら勤め先を離れて専業として進めていくということも検討できます。

■まとめ
本章では起業する前に知っておきたい基礎知識や注意点について見てきました。
起業前には色々と考えなければならないことがあるので大変ですが、目下必要になるのは資金集めと起業の形態をどうするかの思案でしょう。
会計や税金に関してはスタートしてからでも勉強できるので、一旦は後回しでも良いかもしれません。
いずれにしても起業前には勉強すべきことがたくさんあるので、起業に関するセミナーや勉強会には積極的に足を運んでください。
商工会議所や公的機関が開くセミナーは実務的な手続や知識を得られるのでぜひ活用しましょう。