2023年3月20日
スタッフブログ
2024年問題はどの業界にも影響するのかを詳しく解説。
私たちは普段の生活の中でネット通販を気軽に利用していますが、通販は売り手、買い手だけでは成立しません。
ネット上のプラットフォーム事業者も必要ですし、購入した品物を買い手に届ける物流の力が絶対に必要になります。
その物流業界では2024年問題がかねてから意識されており、最近はマスコミでも簡単にですが触れられる機会が持たれるようになってきました。
それでも一般の方の多くはまだこの問題に気づいている人が少ないと思いますので、本章では物流業界の2024年問題を取り上げて詳しく解説していきたいと思います。
■2024年問題とは何か?

2024年問題は、働き方改革関連法により運送業界におけるドライバーの労働時間の上限縛りがよりきつくなることにより生じる諸問題を指します。
働き方改革関連法はドライバー以外の職種でも時間外労働時間の上限規制を設定し、すでに大企業(2019年~)および中小企業(2020年~)で施行され運用が始まっています。
ただし柔軟な働き方が社会から要請される一部の職種については5年間適用の猶予を受けられていました。
医師や建設事業者の他、運送事業者などはいきなり規制を強化すると社会の混乱が生じる恐れがあったことから、一定期間の猶予を持たせて社会への浸透を図ることとしていたのです。
その期限がいよいよ迫り、2024年4月から運送事業者、つまりトラックドライバーなども労働時間の上限縛りが強化されることが予定されています。
運送事業者に関しては、特別に労働時間を長めることができる条項を設けた36協定を締結した場合でも、年間の時間外労働時間上限は960時間としなければならない、というものです。
このルールに違反した場合、6ヶ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金というペナルティがあるため企業側も無視するわけにはいきません。
これまでよりもドライバーが働ける時間が少なくなることで、運送業界はもとより、広く社会一般への影響が心配されています。
■物流業界に与える短期の影響は?

まずはこの問題において短期的に生じる問題を見ていきます。
まず働き手であるドライバー自身は、働ける時間が減ることにより収入が減少します。
時間外労働は手当てが付くので収入面では期待が持てるところ、働く時間そのものが減るため、人によっては必要な収入を得ることが難しくなるかもしれません。
そしてドライバーを雇う運送会社としては、従業員を働かせられる時間が少なくなるわけですから、その分売り上げが減少することになります。
売り上げが減少する分、運送会社としては運賃の値上げによってカバーしたいと考えるでしょう。
すると荷主に対しては運賃の値上げ圧力がかかり、費用負担が上昇することになります。
これを嫌う荷主もいるでしょうから、交渉で妥協点を探るか、上手くいかなければ運送会社の鞍替えも検討するはずです。
これまでの荷主と運送会社との付き合い方に変化が生じるかもしれません。
■物流企業に生じる中・長期的な問題は?

次に、労働時間規制が導入された後に生じる可能性がある中・長期的な問題を考えてみます。
運送・配送業に従事するドライバーはマスコミ等でも取り上げられているように労働環境として負荷が高いと認識されています。
ドライバー職種は時間外労働の手当が付くといっても基本給自体は高給なわけではなく、他の職種とさほど変わらないとされています。
人によってはお金を稼ぐことを重視する人もいるでしょうから、働く時間が減って高額の時間外手当にかかる稼ぎが減るのであれば、別の仕事を探すという人も増えるかもしれません。
ドライバー職種を選ばない人が増え、業界全体で人手が不足する可能性が一つ指摘されています。
また厚生労働省ではトラック運転手の平均年齢の統計を取っており、これによると全産業の平均年齢より高く、大型トラックでは48.6歳、中小型トラックでは45.9歳となっています。
ドライバーの高齢化を見ることができ、今後高齢ドライバーの引退時期に人手不足が強まる予想もされています。
翻って消費者サイドではこれから益々ネットを介した取引が加速する方向ですから、運送・配送業界への依存度はより高まっていく予想です。
商品を注文しても、ドライバー不足から配送が遅れたり、長期間待たされるなどの問題が生じる可能性があります。
一企業の問題ではなく、物流システムを根本から見直してより効率的な業務を担えるように検討が必要になるかもしれません。
■ほぼすべての業界に影響する予想

2024年問題は直接的には物流企業で働くドライバーの労働時間規制の問題ではありますが、輸送や配送を利用する全ての人に影響するものです。
一番近接した当事者である荷主は運賃上昇の強い要請を受けることになるでしょうし、事はそれで収まらない可能性もあります。
物流企業側で人手不足が進めば業務処理能力が低下し、これまで通りの業務受注が難しくなるかもしれません。
荷主側はこれまでと同じように配送業務を委託することができなくなり、顧客に商品をスムーズに届けられない可能性も出てきます。
これにより対消費者にネット販売を手掛ける全ての事業者に影響がでます。
また対消費者でなくとも、会社で必要な備品や郵送物などの配送、受け取りでほとんどの企業が物流システムを利用しているはずです。
対消費者で日ごろの取引数が多い企業ほどではないとしても、物流システムを利用している以上はこれまでよりもスムーズにいかなくなる可能性は考えられます。
この問題がひどくなれば、運送業界で撤退や倒産が進んで国内物流のサプライチェーンが寸断されるというシナリオも見えてくるかもしれませんね。
あまりネガティブな予想はしたくないので、問題が大きくならないように業界だけでなく国や自治体も必要な手立てを講じてもらいたいと考えます。
■まとめ

本章では物流業界の2024年問題について見てきました。
物流企業で働くドライバーの労働時間規制により、これまでよりも働ける時間が減ることから様々な派生作用が危惧されています。
ドライバーと彼らを雇用する企業、そして運送を委託する荷主は当事者として直接影響を受けることになり、それぞれの対応を考えることになります。
ほとんどの業界が何らかの物流の恩恵を受けているでしょうから、多少なりとも影響は出そうですね。