2022年10月28日
会社経営
経営者・社長の責任とは?起業前に知っておきたい6つのこと
起業をすること自体は意外と簡単で、個人事業であれば特別難しい手続きは要りませんし、法人を作る場合も現在はハードルがかなり下がっているので誰でも社長になることはできます。
ただし社長になればそれなりの責任が発生するので、どういった責任が発生するのかは起業前に知っておきたいところです。
本章では経営者・社長がどのような責任を負うことになるのか見ていきます。
■経営者・社長とは
まず経営者・社長の概念ですが、経営者には一般的に取締役も含まれるものの、ここではその中でも会社を代表する一人をイメージして進めることにします。
これがつまり会社のトップ=社長ということで、個人事業であればダイレクトに事業者自身が社長となります。
これを前提に、経営者・社長の責任にどのようなものがあるか見ていきます。

■融資元に対する責任
会社運営にあたり事業資金の融資を受けることが多いと思いますが、その融資元に対する責任です。
個人事業主は会社と個人の切り分けが無いので、融資元に対し債務者として直接に弁済の責任を負います。
法人は経営者個人との切り分けがなされているので原則として個人では責任を負いませんが、多くの場合代表者の個人保証を求められるため、連帯保証人として保証債務の責任を負うことになります。

■会社の方向性を決定づける責任
これは法的責任というよりも道義的責任と言った方が良いかもしれませんが、経営者にはその会社の方向性を決定づける責任があります。
従業員を雇っている場合は会社が破綻してしまえば従業員の生活が成り立たなくなりますから、大切な従業員を守るためにも会社を軌道に乗せ、利益を出していく責任があります。

■株主・投資家に対する責任
株式会社の場合、資本提供を受ける株主や投資家に対する責任が生じます。
営利法人は利益を出すことが任務の一つであり、株主や投資家には配当などの形で利益を還元しなければなりません。
出資は借り入れと違いますので、融資元に対する返済の責任とは性質が異なります。
株主や投資家には返済は必要なく、仮に儲けを出すことに失敗したとしても必ずしも法的な責任が生じるわけではありません。
ただし業務運営にあたり経営者としてやるべきことをやらないなど、故意や過失がある場合には下で見るように責任を追及される可能性があります。

■会社の取引先に対する責任
ビジネスを行う以上は取引先との関係を持つことになります。
順調にいっていれば良いですが、トラブルは予想もしない所から発生するものです。
事業上の取引でトラブルが起き、自社に責任がある場合には会社にその責任が及びますので、個人事業者は直接その矢面に立たされます。
法人でも経営者に重大な過失や職務怠慢などがあれば、連帯責任として経営者個人の責任が問われることがあります。

■会社法人に対する責任
法人の場合、経営者は対法人との関係において委任契約を結んでいる立場になります。
会社経営という仕事を法人から委任されているということですね。
正しい運営がされていれば良いですが、例えば経営者個人の不動産を市場価値よりも不当に高い金額で法人に譲渡したとしましょう。
経営者は法人の取引実務を行う立場ですから、やろうと思えばこのような取り引きもできてしまいます。
しかし上記のような取引は経営者個人は本来の価値よりも高額の対価を受け取れる反面、法人側は不当に高い金額で買わされることになるため、法人側に金銭的損害が発生します。
このような取り引きを利益相反行為といい、会社に対して損害を与える行為ですので避けなければなりません。

■訴訟リスクは覚悟が必要
もし会社法人や株主などに損害を与えた場合、株主代表訴訟という形で経営者が訴訟を起こされることがあります。
法人は人ではないので主体的に訴訟を起こせませんが、会社の損害は出資をした株主の損害でもありますから、株主が法人に代わって訴訟を行います。
取引先や消費者などに損害を与えてしまった場合は、第三者責任訴訟という形で経営者の責任を追及されることになります。
真っ当にビジネスを行っていれば訴訟沙汰になることはめったにないとは言え、トラブルはどういう形で起こるか分からないので、訴訟リスクがあることについては理解が必要です。

■まとめ
本章では起業した場合に考えられる経営者・社長に発生する責任について見てきました。
経営者・社長は非雇用者と違い様々な責任を負う立場となります。
それだけやりがいのある人生を送ることができますが、複数の方面に対して法的責任を負う可能性があることは承知しておく必要があります。
経営者になる以上はリーガルリスクに配慮した事業展開が求められますから、起業前にセミナーなどで経営者リスクについて勉強できる機会があったらぜひ参加してみてください。