2023年6月26日
会社経営
小規模企業共済とは?メリットやデメリットを含め詳しくお教えします!
企業経営者あるいは個人事業主の方は様々な機会を捉えて小規模企業共済の話題を見聞きすると思います。
あるいは顧問税理士や顧問社労士などから検討を打診されることもあるかもしれませんね。
何となく良さそうとは思っていても、あらゆる制度にはメリット・デメリットがあるわけですし、直接の当事者になる者としてリスクをしっかり判断しなければ導入には踏み切れません。
この回では小規模企業共済がどのようなものか、メリットやデメリット、リスクについて詳しく解説していきますので、ぜひ参考になさってください。
■小規模企業共済とは?

本共済制度は昭和40年に小規模企業共済法という法律により作られたものです。
勤め人の方は多くの会社で退職金制度がありますから、定年退職後の生活資金の面で不安に対処することができます。
会社経営者や役員、自営業者の場合は被雇用者のような制度がなく、高齢となり引退した後の生活保障に不安がありました。
そこで現役時代に一定の掛け金を支払い、退職後などにまとまった金額を払い戻してもらうことで退職金と同じような機能を持つようにしたのが小規模企業共済です。
勤め人の方が利用する退職金制度と違うのは、事業が上手くいかなくなった時の事業再建に要する資金としても活用が可能であることです。
小規模企業共済の運営は独立行政法人中小企業基盤整備機構が担っており、公的な性質を持つ組織ですから事業破綻などのリスクを考える必要はなく安心して利用できます。
■小規模企業共済のメリットは?

本共済制度は退職金の準備ができる他に以下のようなメリットがあります。
①掛け金は全額控除できる
共済の掛け金は全額が所得控除の対象になります。
所得から掛け金を控除することで数字上の課税所得を減らすことができ、節税効果を生みます。
イメージとしては会社経営における経費のようなもので、確定申告によって手続きを行えばお得を享受できます。
②掛け金の選定に自由度がある
共済の掛け金は1000円~7万円まで、500円単位で自由に設定することができます。
資金に余裕があれば掛け金を増やし、将来の共済金をより多くもらうことができます。
さらにその掛け金は全額控除の対象ですから損はありません。
掛け金の調整は加入後に随時行うことができるので、その時々の資金の余裕状況をみて自分で自由に決めることができます。
③共済金の受取方法を選べる
将来受けとる共済金は一括払い、分割払いもしくは一括と分割の併用払いの三種類から選ぶことができます。
生活資金として利用するなら安定性を考慮して分割、まとまった資金源として活用したいなら一括払いと自由に選択できます。
④共済金は退職所得扱いで税負担が軽減
受け取る共済金は退職所得扱いになり、税制上で優遇措置があるため非常に有利です。
まず一定の退職所得控除が可能で、これにより課税対象を大きく減らすことができます。
退職所得控除を考慮した上で、さらに二分の一を乗じた額が課税対象とされるため大きな負担軽減が望めます。
⑤短期間の積み立てで共済金を受け取る権利が得られる
社会保険の年金制度のように、何十年も保険料を払わないと年金を受け取る権利を持てないようだと少し不安です。
小規模企業共済の場合、最低6ヶ月間積み立てを実施すれば共済金を受け取る権利が発生します。
12か月以上の積み立てを実施すれば解約手当金を受け取ることもできます。
⑥加入者貸付け制度がある
小規模企業共済では掛け金の範囲内で事業資金の貸付けを受けることができ、どれも一般の融資に比べて低金利です。
貸付の種類は以下のようにいくつかあり、適用のあるケースで貸し付けを受けられます。
貸付名称
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貸付け上限
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金利
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一般貸付制度
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掛金の範囲内で最大2,000万円
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年1.5%
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緊急経営安定貸付
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〃2,000万円
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年0.9%
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傷病災害時貸付
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〃2,000万円
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年0.9%
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福祉対応貸付
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〃2,000万円
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年0.9%
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創業転業時・新規事業展開等貸付
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〃2,000万円
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年0.9%
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事業継承貸付
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〃2,000万円
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年0.9%
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廃業準備貸付
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〃2,000万円
|
年0.9%
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■小規模企業共済のデメリットは?

本共済制度はメリットが大きいので勧められる機会が多いと思いますが、以下のようなデメリットやリスクもあるので承知が必要です。
①掛け捨てになるリスク
共済金を受け取るための最低加入期間が短いことがメリットの一つですが、事業の運営状況によっては状況が急変し掛け金の支払いができなくなることもあるかもしれません。
加入1年未満で解約したり、掛け金の支払いを滞納して強制解約となった場合には掛け金が戻ってこないリスクが生じます。
②元本割れのリスク
短期間の加入で共済金を受け取る権利は発生するものの、加入期間20年未満で解約した場合には、支払った掛け金の額よりも受け取れる共済金が少なくなってしまいます。
受け取る共済金を掛け金よりもプラスにするには、少なくとも20年以上の加入期間が必要です。
③課税を受ける
受けとる共済金は退職所得として課税され、税制上で優遇を受けられますが、そもそも課税対象になることを知らないとリスクになります。
特にまとまった資金源として用いることを想定している場合、課税を受けた上で手元にいくら残るのか把握できるようにしておかないと想定よりも低額となり、必要金額を満たせないこともあるかもしれません。
■小規模企業共済の加入資格

小規模企業共済に加入できるかどうかは、業種等の要件と従業員数の要件の二つから判断されます。
種類別に見てみます。
業種等の要件
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従業員数要件
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建設業、製造業、運輸業、サービス業(宿泊業・娯楽業に限る)、不動産業、農業などを営む会社役員または個人事業主
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常時使用する従業員の数が20人以下
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商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)を営む会社役員または個人事業主
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常時使用する従業員の数が5人以下
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企業組合の役員
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事業に従事する組合員の数が20人以下
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農業の経営を主として行っている農事組合法人の役員
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常時使用する従業員の数が20人以下
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弁護士法人、税理士法人等の士業法人の社員
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常時使用する従業員の数が5人以下
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本共済は小規模の事業者を対象としているため、雇用人数が規定以上になると加入できません。
■加入手続きの流れと受付窓口

共済制度の運営自体は中小企業基盤整備機構が担っていますが、加入手続きの窓口は機構ではなく、地元の金融機関や商工会議所などの団体になります。
「地元の自治体名+小規模企業共済加入」などで検索すれば調べられると思いますので試してみてください。
加入手続きを行う際には会社の役員等の場合には会社の登記簿等、個人事業主の場合は確定申告書の控えなどの書類が必要になります。
■まとめ

本章では小規模企業共済のメリットやデメリット、リスクなどについて見てきました。
全体的にはかなりメリットが大きい制度ですので、可能であれば利用の検討をお勧めします。
メリット面では掛け金の控除が可能であることが大きく、とてもお得な制度であると評価できます。
デメリットやリスクもあり、特に加入期間が20年以上ないと元本割れのリスクがあることは考慮する必要があるでしょう。
メリット・デメリット双方を評価の上、メリットが上回りそうであれば加入を検討してみては如何でしょうか?